- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎

消化管の粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、びらんや潰瘍を形成する原因不明の疾患を炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease : IBD)といい、主要なものとして潰瘍性大腸炎とクローン病があります。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が生じる疾患です。一般的に、肛門に近い直腸から炎症が始まり口側の大腸へと連続的に広がっていくという特徴があり、症状がおちつく「寛解」と悪化する「再燃」を繰り返します。発症原因が不明であるため完治させる治療法が確立されておらず、厚生労働省から難病に指定されています。日本では軽症の方が多いものの患者数は年々増加しており、2023年度の患者数は約31.7万人と推計され2015年と比較しても約1.4倍に増加しています。発症のピークは男性:15〜29歳、女性20〜34歳となっており、若年での発症が多い疾患ですが、年齢に関係なく小児から高齢者まで発症することがあります。
※難病指定されている疾患であり、中等症以上の方は医療費助成が受けられます。
はっきりとした原因は解明されていませんが、遺伝的要因、免疫反応の異常、腸内細菌のバランスなどの腸内環境の乱れ、環境要因やストレスなどが関与していると考えられています。
潰瘍性大腸炎は、炎症の範囲や臨床経過、重症度によっていくつかのタイプに分類されます。
症状の強さ(排便回数、血便や発熱の有無など)により、軽症・中等症・重症・激症に分類され、炎症の広がり方によって、以下の3つのタイプがあります。
直腸炎型
炎症が直腸のみに限局している。
左側大腸炎型
直腸から下行結腸までに炎症が広がっている。
全大腸炎型
大腸全体に炎症が広がっている。臨床経過でも以下のように分類されます。
再燃寛解型
症状がおちつく「寛解」と悪化する「再燃」を繰り返します。約半数の患者様がこのタイプです。
慢性持続型
初回の症状から半年以上炎症が持続します。
急性劇症型
短期間で急激に悪化し、激しい症状がみられます。
初回発作型
初回の症状のあとは落ち着きますが、将来的には再燃する可能性があります。
大多数の患者様は軽症から中等症に該当し、再燃と寛解を繰り返す慢性的な経過をたどります。
代表的な症状は腹痛、下痢、血便です。粘液のような便がでることもあります。重症化した場合には、発熱、貧血などの全身症状をきたします。また、炎症の持続により体重減少が起こりやすくなり、特に小児では成長障害の原因にもなります。
さらに、関節炎や眼の症状、壊疽性膿皮症や結節性紅斑といった皮膚症状、アフタ性口内炎、肝胆道系障害など、消化管以外にも様々な症状が出ることがあります。
以下のような症状がみられる方は潰瘍性大腸炎の発見につながる可能性があります。
まずは問診で症状の詳細(排便状況、下痢や血便の頻度、腹痛の程度、発熱など)や既往歴、家族歴、服用している薬剤について確認します。その後、血液検査やレントゲン・CT、便検査、大腸カメラ検査などを組み合わせて精査を行いますが、確定診断には大腸カメラ検査が必須となります。大腸カメラ検査では、大腸粘膜の状態を直接確認することができ、粘膜組織を採取して病理検査を行うこともできます。内視鏡所見と病理検査結果を確認することが正確な診断に必要となります。また、粘膜障害の程度や範囲を把握することで、診断確定後に適切な治療を選択することにもつながります。
クローン病や感染性腸炎(サルモネラ、赤痢など)、薬剤性腸炎でも潰瘍性大腸炎に似た症状を引き起こすことがありますので、病理検査に加えて薬剤服用歴の確認や細菌培養検査なども必要となります。
各種検査を行っても診断を決定づける所見がない場合もあり、臨床経過と検査結果を総合的に判断する必要があります。しばらく経過観察してから再検査を行った時に診断が確定する場合もありますので、初回で診断がつかなかった場合は定期的な症状確認も重要となります。
潰瘍性大腸炎の治療は、病状に応じて寛解導入療法と維持療法に分かれます。症状のある活動期・再燃期にはできるだけ早く炎症をおさえて大腸粘膜の状態を改善させるための治療(寛解導入療法)を行います。症状のない寛解状態にすることが第一の目標となります。寛解状態となったら、症状の再燃を防ぐ維持療法を継続していきます。
根本的な治療法がない疾患であるため、治療の主な目的は寛解状態をできるだけ長く維持することになります。
治療の中心となるのは内科的治療で、以下のようなものがあります。
5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤
大腸の炎症を抑える基本薬です。軽症〜中等症の患者様に有効である場合が多く、寛解維持・再燃予防にも効果があります。経口薬、注腸薬、坐剤があり、病状に応じて使い分けられます。
ステロイド製剤
5-ASA製剤で十分な治療効果が得られない中等症の方や重症の方に使用されます。強力に炎症を抑える効果がありますが、長期使用による副作用(糖尿病、骨粗鬆症、白内障など)に注意が必要です。また、寛解維持効果がないため、できるだけ早期に減薬・終了して使用量を抑えていくことが重要となります。近年は全身の副作用を抑えた局所作用型ステロイド製剤もあり、軽症〜中等症の寛解導入に有効な場合があります。
免疫調節薬
ステロイドが効かない場合や再燃を繰り返す場合に併用されることが多く、免疫の過剰な反応を抑える薬剤です。主に用いられるチオプリン製剤(アザチオプリンなど)は、治療効果が出てくるまでに数週間~3ヶ月程度かかることが多いほか、遺伝子型により副作用が強くでることがありますので投与前にNUDT15遺伝子型の検査を行う必要があります。
免疫抑制剤
免疫反応をより強力に抑える薬剤です。ステロイドが効かない場合や重症の患者様に用いられます。
生物学的製剤
炎症を引き起こす特定の物質をターゲットとしており、寛解導入・維持のいずれにも有効な治療法です。抗TNF-α抗体製剤、抗IL-12/23p40抗体製剤、抗IL-23p19製剤、JAK阻害薬などがあり、点滴・皮下注射・経口薬など様々なものがあり、患者様の病状やライフスタイルに合わせて薬剤を選択します。
血液から炎症に関与する白血球などを取り除く治療法で、薬物療法で十分な治療効果が得られない場合に併用することがあります。
薬物治療で十分な効果が得られない重症の場合や、重篤な合併症(大量出血、穿孔、がん化など)をきたした場合には、外科手術(全結腸切除術)が必要になることがあります。
ストレスや疲労は症状悪化の原因となることがあります。寛解期には食事の制限はありませんが、暴飲暴食や過度のアルコール摂取は腸管への負担が大きくなるため控えましょう。また、適度な運動は寛解維持や生活の質(QOL)維持に効果があると言われています。
薬剤治療の効果を高め、できるだけ良い状態を継続するために健康的な生活を心がけましょう。
潰瘍性大腸炎は、根本的な治療方法がなく難病指定されている疾患ですが、近年は治療薬も増えており適切な治療・経過観察により寛解期を長く維持することも可能となってきています。「排便の症状であり相談しにくい」「大腸の検査はこわい」と感じる方も多いと思いますが、早期発見・治療開始が重要な疾患ですので、気になる症状が続く場合には早めに消化器内科を受診して相談していただくことをおすすめします。
当院では、潰瘍性大腸炎の早期診断と適切な治療に加えて生活習慣・食事指導等も行い、患者様が安心して日常生活を送れるようサポートさせていただきます。「気になる症状がある」「以前からおなかの調子がすぐれない」といった方は、ぜひ一度ご相談ください。
潰瘍性大腸炎は厚生労働省の指定難病の一つであるため、一定の条件を満たすと医療費助成の対象となります。助成対象となった場合には、治療費用の負担割合の軽減や上限が設けられることにより医療費の自己負担が軽減されます。当院の院長は潰瘍性大腸炎の難病申請が可能な難病指定医に認定されておりますので、医療費助成制度の確認を希望される方はご相談ください。

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