- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
大腸がん
大腸がん

大腸がんは、大腸の粘膜に発生する悪性腫瘍で、日本人に多いがんの一つです。大腸は大きく結腸(盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸)と直腸に分けられ、日本人ではとくにS状結腸と直腸にがんが発生しやすいことが知られています。食生活の欧米化や人口の高齢化に伴い大腸がん患者様は増加傾向であり、厚生労働省のがん統計によると、がんの中で死亡数(2024年)は男性2位・女性1位、罹患数(2021年)は男性・女性ともに2位に位置しており、年間およそ15万人が新規に大腸がんと診断され5万人以上が亡くなられています。
大腸がんの多くは、良性の大腸ポリープが時間をかけて大きくなり悪性化して大腸がんになるため、良性ポリープの段階で発見して切除することができればがんの発生を予防することができます。大腸ポリープや早期の大腸がんは自覚症状がほとんどなく、症状が出現した時点で進行したがんの状態となってしまっている場合が多い疾患ですが、発生初期の大腸がんであれば大腸カメラにより切除できる場合もあり、大腸粘膜にとどまる大腸がんの5年相対生存率は97.3%と言われていますので、早期発見が非常に重要となります。
大腸ポリープをすべて切除した状態にすることで、大腸がんの死亡リスクを79〜90%低下させることができるともいわれています。40歳以上になると罹患率が上昇し始め、高齢になるほど罹患者は増加する傾向がありますので、大腸がんのリスク因子のある方や40代以上の方は症状がなくても大腸カメラ検査による精査を受けることをおすすめしています。
大腸がんの発症には食事をはじめとした生活習慣が深く関わると考えられています。具体的には以下のような要因がリスクを高めるといわれています。下記に該当する方は、症状がなくても大腸カメラ検査をうけることをお勧めします。
偏った食生活
高脂肪食・赤身肉・加工肉の過剰摂取、食物繊維の不足など
過度な飲酒
男女ともに1週間に純アルコール150g(1日ビール500ml)程度の飲酒でリスクが上がりはじめ、飲酒量に応じてリスクが増加するといわれています。
喫煙
1日20本以上の喫煙で男性は約1.2倍、女性は約1.4倍程度大腸がん発生率が上昇するといわれています。飲酒と喫煙が合わさると発生リスクは3.0倍増加するという報告もあります。
肥満
肥満に伴う体内環境の変化(インスリン抵抗性の増加など)がリスクを高める可能性があると考えられています。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎の長期罹患は大腸がんの発生リスクとなります。
大腸がんの既往
大腸ポリープや大腸がんの診断・治療歴のある方は大腸がんの発生リスクが高くなるといわれています。
大腸がんの家族歴
原因遺伝子・遺伝性疾患(家族性大腸腺腫症、リンチ症候群など)がはっきりしている大腸がんは大腸がん全体の5%とされています。その他、原因が特定できていないものの家族間で大腸がんが複数人発生するものが25%あるといわれており、食生活や生活習慣を共有していることも影響していると考えられています。
早期の大腸がんは症状がないことが多く、進行してがんが増大するとさまざまな症状がみられるようになります。がんからの出血により血便や下血が起こる他、がんによって大腸が狭くなることにより、下痢・便秘を繰り返す・便が細くなる・残便感やお腹の張った感じが出る、などの症状が出ることがあります。さらに進行すると、出血に伴う貧血症状や、大腸が腫瘍によって詰まってしまう腸閉塞などをきたし緊急処置が必要となることもあります。がんができた部位によって、口側(盲腸・上行結腸・横行結腸)では貧血、肛門側(下行結腸・S状結腸・直腸)では便通異常や血便が見られやすい傾向があります。
以下の症状に心当たりがある方は、消化器専門医にご相談ください。
※自覚症状がなくても便潜血検査で陽性となった方は目に見えない出血がある可能性もありますので、大腸カメラ検査をおすすめします。
大腸がんが疑われる場合、段階的に以下のような検査が行われます。
便潜血検査は便に血液が混ざっているかどうかを調べる検査で、食事内容や時間の制限がなく誰でも簡単に行うことができます。
感度(大腸がんがある方が検査で陽性となる確率)は84%、特異度(大腸がんがない方が検査で陰性となる確率)は92%と報告されており、大腸がん患者様の1割程度は検査で陰性となってしまうものの、陽性となった方の約30〜40%に前がん病変である大腸ポリープが、約3%に大腸がんが発見されています。毎年便潜血検査を受けることで、大腸がんによる死亡率を70%低下させるという報告もあります。
貧血の有無や腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)を調べることで、がんの疑いがあるかどうかを確認します。
大腸がん診断において最も精度が高く重要な検査です。CT検査などでは発見できない小さな病変もみつけることができます。内視鏡で大腸の粘膜を直接観察し、大腸ポリープが見つかった場合にはその場で切除することもできます。粘膜異常やその場で切除できない病変がみつかった場合には粘膜の一部を採取(生検)して病理検査を行うことで詳細な診断も可能です。
病変部から組織を採取して顕微鏡で確認し、診断を確定させる検査です。がん細胞の有無、がんであった場合の細胞の種類や悪性度などを知ることができます。
大腸がんの治療は、がんの進行度(ステージ)や患者様の全身状態などにより異なります。
がんが粘膜内や粘膜下層の浅い部分にとどまっている場合は、内視鏡で病変を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)や、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の適応となります。外科手術にくらべて体への負担が少なく、回復も早い治療法です。
がんが粘膜下層深部を超えて浸潤している場合や、リンパ節転移が疑われる場合には外科的手術が基本となります。がんのある腸管と周囲のリンパ節を一緒に切除し、どこまでがんが広がっているか詳細な評価も行いステージ(進行度)を確定します。
手術後の再発予防や、手術で完治が難しい進行・転移したがんに対しては、抗がん剤や分子標的薬を使用した薬物療法が行われます。病変の部位や遺伝子変異の有無により薬剤の組み合わせを決定します。
主に直腸がんの場合に、手術前に病変を小さくして肛門を温存する目的や、術後の再発予防などのために放射線治療が併用されます。がんによる症状や出血を和らげる緩和治療として行われる場合もあります。
大腸がんは、早期に発見できれば十分に治癒が目指せるがんです。大腸カメラ検査を行い前がん病変である大腸ポリープを切除することで予防が可能であり、早期がんであれば大腸カメラによる内視鏡治療で完治できる場合もあります。しかし、初期段階では自覚症状がない場合が多く、症状に気づいた時には進行してしまっているケースも少なくありません。だからこそ、無症状のうちから定期的に検査をうけることがとても重要です。
特に大腸がんのリスク因子のある方や40歳以上で検査をうけたことがない方は早めに一度内視鏡精査を受けることをおすすめします。また、過去に大腸ポリープや大腸がんの治療を受けた方も定期的な経過観察が推奨されています。
大腸カメラ検査は「怖い、ハードルが高い」と感じる方や過去の検査でつらい思いをされた方も多いと思います。当院では、できるだけ負担を少なく検査ができるよう丁寧な対応を心がけております。何か気になる症状や不安に感じることがある方は、どうぞお気軽に当院にご相談ください。

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