- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
胃がん
胃がん

胃がんとは、何らかの原因で胃粘膜の細胞ががん化して無秩序に増殖することで発生する悪性腫瘍です。がんは成長とともに胃の壁の深部へと広がっていき、がんが進行すると周囲の臓器やリンパ節への転移やお腹の広範囲にがん細胞が広がる腹膜播種を引き起こすリスクが高くなっていきます。診断・治療の進歩により胃がんは早期に発見することができれば完治できることも多くなりましたが、残念ながら進行した状態で発見される方もまだまだ多いのが現状です。
世界的にみると日本人は胃がんの罹患率が高いと言われています。近年はピロリ菌の感染率低下や除菌治療の普及、食生活の変化などにより、日本では胃がんの罹患率・死亡率はともに減少傾向ですが、厚生労働省のがん統計によると、がんの中で死亡数(2024年)は男性で3位・女性で5位、罹患数(2021年)は男性・女性ともに4位といずれも上位に位置しており年間約11万人の方が新たに胃がんと診断されています。
初期は自覚症状がないことが多くバリウム検査では小さい病変の発見は難しい場合があるため、早期発見のためには定期的な胃カメラ検査がとても重要です。
胃がんの原因として最も重要なものとしてヘリコバクター・ピロリ菌感染が挙げられます。ピロリ菌に感染すると胃粘膜に慢性的な炎症がおこり胃粘膜の萎縮(萎縮性胃炎)が進行します。この萎縮粘膜から発生する胃がんが多いことが知られており、日本人で胃がんを発症された方の約99%がピロリ菌に感染していたという報告もあります。ピロリ菌に感染している場合、除菌治療を行うことで将来的な胃がんの発症リスクを抑えることができますが、萎縮した胃粘膜は残念ながら元に戻らないためピロリ菌感染のない方と比較すると胃がんのリスクは高い状態が続いてしまいますので、ピロリ菌感染の有無は胃がんの重要なリスク因子となります。
その他の原因としては、以下のようなものが知られています。
喫煙
喫煙は胃がんのリスクを1.5~2倍高めると言われています。
過度な飲酒
日本人男性では1日にビール500ml(日本酒1合)以上の飲酒をすると胃がんのリスクが上昇するといわれている他、アルコールを分解しにくい体質の人は飲酒によりスキルス胃がんの発症リスクが高くなるなどの報告があります。
塩分の多い食事
食塩の摂取量が多い地域ほど胃がんによる死亡率が高いといわれています。
胃がんの家族歴
胃がんの家族歴がある方は、家族歴がない方と比較して胃がんの発生リスクが1.4~2倍程度高くなることが報告されています(遺伝性の場合もありますが、多くは生活習慣などの環境要因が共有されていることが影響していると考えられています)。
上記に該当する方、特に、ピロリ菌感染を指摘された方やピロリ菌の除菌歴がある方、胃がんの家族歴のある方は定期的な胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
初期の胃がんは無症状であることが多く、症状があったとしても軽微なものであることがほとんどです。がんが進行し病変が大きくなり胃の壁の深くまで入っていくと次第に様々な症状が起こりますが、進行したがんでも他臓器に転移して全身に広がってから症状が現れる場合もあります。胃がんとその他の消化器疾患を症状のみで判別することは難しく、軽い症状の場合には市販薬で一時的に症状が治まり検査のタイミングが遅れてしまうこともありますので、下記のような症状がある方は早めに受診して検査などについてご相談いただくことをおすすめします。
※特に、黒い便が見られる場合には胃などで出血を起こしている可能性がありますので、原因ががんでない場合も含めて早期の精密検査が必要です。
症状や病歴などから胃がんが疑われる場合、必要に応じて次のような検査を行います。
血液検査では、貧血や炎症の有無、栄養状態などが把握できる他、腫瘍マーカー(CEAやCA19-9など)を測定することでがんの早期発見につながることがあります。
造影剤(バリウム)を服用して胃の中に溜めた状態で体位を変えながらレントゲン撮影を行い、胃の形や粘膜の状態を確認する検査です。比較的身体への負担が少ない検査ですが、造影剤による偶発症(頻度は低いものの、腸閉塞や腸管穿孔など重篤なものもあります)や、早期胃がんや微小な病変に対する診断能に問題があるという欠点がある他、異常を指摘された場合には確定診断のために改めて胃カメラ検査を行う必要があります。
鼻や口から内視鏡を挿入し、食道や胃の粘膜を直接観察する検査です。胃がんをはじめとした多くの疾患を発見・診断することが可能であり、異常がみつかった場合には組織を採取(生検)して病理検査を行うことでより精密な診断につなげることができます。胃がんの早期診断には最も有効な検査であり、バリウム検査やCTなどでは判別できない微細な病変を発見できるほか、慢性胃炎やピロリ菌感染の有無などの胃がんのリスク因子についても確認することができますので、胃がんの診断だけでなく予防の観点からも重要な検査といえます。
病変部から組織を採取して顕微鏡で確認し、診断を確定させる検査です。がん細胞の有無、がんであった場合の細胞の種類や悪性度などを知ることができます。
胃がんの治療は、がんの進行度(ステージ)や患者様の全身状態などにより異なります。
内視鏡的切除術(EMR、ESD)
がんが胃の粘膜内もしくは粘膜下層の浅い部分にとどまっておりリンパ節転移のリスクが低い場合には、内視鏡でがんを切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の適応となります。近年は胃カメラによる内視鏡治療が進歩しており、早期の胃がんは内視鏡治療により完治できる病変も多くなっています。
外科的切除(手術)
がんが深く進行している場合、胃の一部または全部を切除する外科手術が行われます。必要に応じて胃のまわりにあるリンパ節もあわせて切除します。
全身化学療法(抗がん剤治療)
外科手術前にがんを縮小させたい場合や、他の臓器に転移があるなど手術による完治が困難な場合には、抗がん剤による治療が行われます。また、手術後の再発予防として補助的に行われることもあります。
胃がんは早期に発見することができれば内視鏡治療のみで完治が目指せる疾患です。患者様それぞれが、「ご自身がどのような胃がん発症リスク(ピロリ菌感染の有無など)を持っているか」を把握していることが重要であり、その上で、適正な検査間隔で定期的な胃カメラ検査を受けていただくことが胃がんから命を守る最も効果的な方法となります。
当院では、お一人おひとりの症状・状況にあわせて丁寧に向き合い不安を取り除くことができるよう努めています。気になることがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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