- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
ピロリ菌感染症
ピロリ菌感染症

ピロリ菌の正式名称はHelicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)といいます。胃の中には胃酸という強い酸性の消化液があるため通常の細菌は生存できませんが、ピロリ菌は自分の周囲にウレアーゼという酵素を分泌することで胃酸を中和するアンモニアを作り出し、胃酸の中でも生きていくことができます。
ピロリ菌は免疫機能が未成熟な幼少期に経口感染(菌が口から体内に入ること)すると考えられています。ピロリ菌に感染している家族からの食べ物の口移しや不衛生な井戸水を飲むことなどが感染のきっかけになります。上下水道が十分に整備されていない環境で感染リスクが高まるため、日本では高齢になるほど感染率が高くなる傾向があります。
先進国では衛生環境が改善されているため感染率は減少傾向にありますが、日本人全体では約40~50%の方がピロリ菌に感染しているとされており、世代別感染率は10~20代では10%前後ですが、40代で30%程度、50代で40~50%程度と上昇し、60歳を超えると70%以上の方が感染していると言われています。
ピロリ菌は胃の粘膜に感染すると、胃の粘膜を慢性的に傷つけることで萎縮性胃炎を引き起こし、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となる他、胃がんのリスクを高めることが知られています。日本人では胃がんを発症された方の約99%がピロリ菌に感染していたという報告もあります。ピロリ菌に感染していても症状があるとは限らず、萎縮性胃炎が進行してから症状が出てくることもありますので、早期の発見が重要です。内服薬による除菌治療により高確率で菌の除去が可能であり、除菌により胃炎の進行や胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんの発症リスクを下げることができる他、次世代への感染予防の効果も期待できます。
除菌成功が早ければ早いほど胃がんの予防効果が高くなるため、いかに早く除菌治療を行うかが重要となります。胃の症状(胃もたれ、胃の痛みなど)がある方や、ご家族にピロリ菌感染や胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんの既往がある方、幼少期に自宅で井戸水を使用していた方は一度ピロリ菌の検査をうけることをおすすめします。
ピロリ菌による炎症が長期間続くと胃粘膜の萎縮(萎縮性胃炎)を引き起こします。粘膜の萎縮が進むと胃酸の分泌能や胃の運動機能が低下し、胃もたれや胃の痛み・吐き気・消化不良などの症状がみられるようになります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発生リスクが上がるほか、胃がんの多くは萎縮した粘膜から発生することが知られています。胃潰瘍の患者様の70~90%、十二指腸潰瘍の患者様の90~95%にピロリ菌感染があるという報告もあり、さらに、ピロリ菌感染のある人は未感染の人と比較すると胃がんの発生リスクが15倍以上になるともいわれています。その他にも、胃ポリープ、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、慢性蕁麻疹、鉄欠乏性貧血との関連が指摘されています。
ピロリ菌感染の有無を調べる方法は、内視鏡(胃カメラ)を使用する検査とそれ以外の検査に分かれます。
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌はウレアーゼという酵素をだして尿素を分解しアンモニアを作り出します。内視鏡で胃の粘膜組織を採取し、アンモニアによるpHの変化を調べて診断する方法です。
鏡検法
内視鏡で採取した胃の粘膜組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を確認します。
尿素呼気試験(UBT)
尿素を含んだ検査薬を内服し、内服前後の呼気を採取します。ピロリ菌が尿素を分解する際に発生する二酸化炭素の変化を測定して診断を行います。侵襲が少なく精度の高い検査です。
抗体測定法
血液や尿のピロリ菌抗体価を測定することでピロリ菌の有無を判定します。
便中抗原検査
便を採取し、ピロリ菌抗原の有無を調べる検査です。
※ピロリ菌の検査および除菌治療には保険適用のための条件があります。
胃カメラ検査で慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍と診断された方や、胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少性紫斑病の方、早期胃がんに対する内視鏡治療後の状態が確認された方はピロリ菌検査が保険適用となります。検査の結果ピロリ菌感染が確認された方は、2回目の除菌治療(2次除菌)までが保険適用となります。
ピロリ菌検査のみを行う場合は保険適用外となりますのでご注意ください。
6ヶ月以内に健康診断や人間ドックで胃カメラ検査を受けて慢性胃炎と診断されている方もピロリ菌の検査・治療は保険適用となります。他院で胃カメラ検査を受けられた方も診断結果を持参していただければ検査・治療が可能です。
胃カメラ検査で慢性胃炎などがありピロリ菌感染が疑われる場合に検査を行います。検査で陽性であった場合に除菌治療を行います。
①1次除菌治療
2種類の抗生物質と1種類の胃酸分泌抑制剤を1週間服用します。
②1次治療の除菌判定
除菌ができているか判定するために尿素呼気試験を行います。正確に診断するためには治療薬の内服終了後1~2ヶ月程度の間隔をあけて検査を行う必要があります。
③2次除菌治療
1次治療が不成功であった場合に、抗生物質を変更して再度1週間の内服治療を行います。
④2次治療の除菌判定
1回目と同様に尿素呼気試験で判定を行います。
当院では、ボノプラザンという胃酸分泌抑制剤を使用した最も成功率の高い内服薬の組み合わせで治療を行っています。成功率は1次治療で約90%程度、2次治療で98%と報告されていますが、残念ながら2次治療でも除菌できない場合もあります。3次除菌以降の治療は保険適用がなく、自費診療となります。
味覚異常(5~15%)、軟便・下痢(10~30%)、肝機能障害(約3%)などの副作用がみられることがあります。ひどい下痢や血便、アレルギー反応(呼吸困難、喘息症状、蕁麻疹、目や口などの粘膜の腫れ)などが発生した場合には、内服を中止して救急対応が可能な医療機関へ連絡し受診相談をしてください。
以下のような場合には自費診療(全額自己負担)となります。
※ピロリ菌を除菌することで将来的な胃がんの発生リスクを減少させることができます。
薬剤アレルギーがあり除菌治療ができなかった方や2次除菌治療に失敗した方も、他の薬剤で治療ができれば70~90%の方が除菌可能といわれています。当院でも自費診療の相談は可能ですので、気になる方は是非一度ご相談ください。
除菌に成功すると粘膜の状態は改善しますが、萎縮性胃炎は残ってしまうため未感染の方と比較すると胃がん発生リスクは高い状態が続きます。胃がんの早期発見のため定期的な胃カメラ検査が推奨されています。

TOP