- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
逆流性食道炎
逆流性食道炎

様々な原因により胃の内容物(胃酸・胆汁・食物など)が食道へ逆流することで食道の粘膜が炎症を起こし障害される状態です。
胸焼けや呑酸(酸っぱいものや苦いものが口の中まで上がってくる)、胸からみぞおちにかけての痛み、胃もたれ、のどの違和感、声のかすれ、咳、睡眠障害など様々な症状が生じます。
日本では近年増加してきており、粘膜障害のある逆流性食道炎は10人に1人程度にみられると推定されています。粘膜障害がない方でも症状がみられる場合があり、逆流による症状は6人に1人程度が自覚されるという報告もあります。
また、炎症が強く高度の粘膜障害を起こす場合には出血や食道狭窄の原因となる他、長期間炎症を繰り返すことでバレット食道と呼ばれる食道がんの発症リスクが高い状態に変化することが報告されています。
薬物治療や生活習慣の見直しで症状や粘膜障害は改善することが多い疾患ですので、症状がみられる場合には胃カメラによる精密検査や適切な治療を受けることが重要です。
逆流性食道炎の主な原因は、胃酸の過剰な分泌や胃内容物の逆流防止機能の低下といわれています。
食生活
暴飲暴食、タンパク質(肉類)摂取量の増加、塩分摂取量の低下などが胃酸分泌量増加の要因となります。
ピロリ菌感染率の低下
ピロリ菌感染により胃粘膜が萎縮し、胃酸の分泌量が低下するといわれていますが、近年では、衛生環境の改善による感染リスク低下や感染者に対する除菌治療の普及により、ピロリ菌の感染率が低下していることで、胃酸分泌量が保たれている方が多くなっています。
食道と胃の境目には下部食道括約筋という筋肉があり、胃から食道への逆流を防いでいます。この筋肉が緩むことで逆流が起こりやすくなります。
下部食道括約筋圧低下の要因としては、
などがあります。また、その他の要因として、
降圧薬や睡眠薬などの一部には、下部食道括約筋圧の低下や食道運動機能低下を引き起こすものがあります。
逆流性食道炎は様々な症状を引き起こします。代表的な症状としては、
などがありますが、その他にも
といった多様な症状の原因となります。
問診
症状の詳細をしっかりと把握するため、生活習慣・食習慣も含めて詳しく問診を行います。専用の問診票(Fスケール問診票、QUEST問診票など)を用いることで診断できる場合もあります。
内視鏡検査
正確な診断のためには内視鏡検査(胃カメラ)が重要です。食道粘膜の炎症や損傷の程度を直接確認し、必要に応じて生検(組織を採取する病理検査)も行います。内視鏡検査を行うことで、食道がんや食道潰瘍などの逆流性食道炎以外の疾患の鑑別も同時に行うことができます。
PPIテスト
内視鏡で粘膜に異常が見つからなくても逆流性食道炎の症状がある、もしくは内視鏡検査の実施が困難であるような場合には、胃酸の分泌を抑える内服薬(PPI:プロトンポンプ阻害薬)を短期間内服して自覚症状が改善されるか確認する方法もあります。
治療には生活指導、薬物療法、外科的治療があります。
生活指導
逆流性食道炎には食事内容や肥満・喫煙などの生活習慣が関係しているといわれています。食べた後すぐに横にならない、腹圧がかかる姿勢を避けるなどの工夫で胃酸の逆流を防ぐことができるほか、下記のような過度な胃酸分泌や逆流を誘発する食品の摂取を控えることも推奨されています。
逆流を起こしやすい食品例
薬物療法
生活習慣の改善のみでは十分な効果が得られない方には薬物療法が中心となります。胃酸の分泌を抑える薬剤を中心として、消化管運動を改善させる薬剤(胃の内容物の排出を促進します)の併用や逆流症状の原因となる薬物の見直しなど、その他の疾患の有無なども考慮して治療薬を決定します。また、ストレスや睡眠障害の影響が疑われる場合には必要に応じてそちらの治療も進めていきます。
外科的治療
症状が高度で内服治療などで改善しない場合や、炎症を繰り返して食道が狭くなったり出血を繰り返したりする症例では外科手術による治療が必要となることがあります。手術の適応となる症例はまれですが、検討が必要な場合には高次医療機関での精密検査・治療相談が必要となります。
逆流性食道炎の正確な診断と治療のためには、内視鏡検査が何よりも重要です。
逆流性食道炎の炎症の中に早期の食道がんが隠れている場合には逆流性食道炎による炎症と食道がんの鑑別が難しいことがあり、そのような事例では確定診断のために内視鏡を用いた生検が必要となります。また、自覚症状から逆流性食道炎が疑われる状況でも、その他の疾患が原因となっている場合には異なる治療法が必要となります。
治療開始前に内視鏡検査でしっかりとした診断をすることが効果的な治療にもつながります。また、症状を繰り返す方や継続的な内服治療が必要な方には定期的な内視鏡検査も推奨されています。
気になる症状がある場合には、内視鏡検査の相談をうけていただくことをおすすめします。
当院では、できる限り苦痛や負担を少なく検査を受けていただけるような体制をつくるよう心がけています。検査に不安がある方もお気軽にご相談ください。

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