- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
胃炎
胃炎

胃炎とは、胃の内側を覆っている粘膜に炎症が起きている状態の総称で、経過や原因により大きく急性胃炎と慢性胃炎の2つに分けられます。
比較的短い期間に急激に胃粘膜に炎症が起こることで、胃痛や不快感、吐き気、食欲不振、腹部膨満感などの症状を引き起こします。多くの場合は一過性で数日から数週間程度の経過で改善しますが、原因によっては重篤化するものがあります。
胃粘膜は攻撃因子(胃液)と防御因子(粘膜を保護する粘液)のバランスが保たれることで維持されていますが、何らかの原因でこのバランスが崩れてしまうと胃の粘膜が傷ついて炎症が起こります。代表的な原因としては、以下のようなものがあります。
薬剤の影響
解熱鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)やステロイド、抗生剤、抗がん剤などの副作用により引き起こされることがあります。特に、痛み止めを頻繁に使用される方は注意が必要です。また、化学物質の誤飲(洗剤や消毒液など)による胃炎は重症化することがありますので早急な医療機関受診が必要です。
暴飲暴食、アルコールの多量摂取
胃酸を増加させる脂っこい食事や、粘膜に強い刺激を与える食事(香辛料の多い料理、カフェインやアルコールの多量摂取など)は胃粘膜の炎症を引き起こすことがあります。
強いストレス
不安や緊張などの心理的ストレスや、重たいケガや重症疾患などの身体的ストレスが誘因となることがあります。
感染
ウイルス・細菌の感染(いわゆる胃腸炎、食中毒など)により胃粘膜障害が生じることがあるほか、アニサキスという寄生虫感染や、慢性胃炎の主な原因であるピロリ菌の初感染の際にも急性胃炎を起こすことがあります。
問診や症状・経過から診断できる場合もありますが、確実な診断や胃の状況把握のためには胃カメラ検査が必要となります。胃カメラ検査では胃粘膜の状態を直接観察できるため、胃炎だけでなく、似た症状を起こす胃潰瘍や胃がん等の有無を確認することができます。また、アニサキスによる症状の場合には、胃カメラでアニサキスの虫体を除去することで治療が可能です。
急性胃炎の治療は、原因の特定・除去と食事制限、薬物療法が中心となります。
原因として疑わしい食物や薬物がある場合にはそれらを中止したうえで、症状緩和と胃粘膜の治癒を目的として薬物療法を行います。また、消化管の安静も重要となりますので、症状によっては短期間の絶食が必要となる場合があります。薬物療法には、胃酸分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、H2ブロッカーなど)や胃粘膜保護薬を使用します。
ピロリ菌感染が原因となっている場合には、除菌治療も行います。
重症例(症状が極めて強い、出血を伴っている等)では、入院治療が必要となる場合があります。
長期間にわたって胃粘膜の炎症が持続する状態を指します。以前は上腹部の不快な症状がある場合をまとめて胃炎と呼んでいたこともありますが、近年では症状の有無ではなく内視鏡検査で確認される粘膜変化や組織学的な炎症によって診断されます。
初期段階では自覚症状がなく、病状の進行に伴い胃もたれや上腹部の不快感、食欲低下などの症状があらわれます。しらない間に進行してしまうことが多く、胃潰瘍や胃がんのリスクを高める原因となるため注意が必要です。
慢性胃炎の多くはピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)の長期感染によって引き起こされます。その他に、自己免疫性胃炎(A型胃炎)が近年注目されるようになってきています。
ピロリ菌感染
慢性胃炎の最大の原因とされるのがピロリ菌感染です。ピロリ菌は幼少期に感染しやすく、除菌治療が行われるまで持続的に炎症を起こし粘膜の萎縮(萎縮性胃炎)を引き起こします。(まれに自然に除菌されることもあります。)萎縮性変化はゆっくりと進行しますが、不可逆的なものであり、胃がんの多くは萎縮した粘膜から発生するため早期の診断と除菌治療が重要です。
自己免疫性胃炎(A型胃炎)
自己免疫性胃炎とは、本来は自分の体を守るための免疫が誤って自身の胃の細胞を攻撃してしまうことで起こります。胃粘膜の細胞が壊れていくことで粘膜の萎縮をきたすほか、ビタミンB12の吸収障害(貧血の原因となります)や胃酸分泌の低下なども起こります。自己免疫性胃炎による萎縮性胃炎は胃がんおよび神経内分泌腫瘍(胃カルチノイド)の発生リスクが高くなることが知られており、他の自己免疫疾患との合併が多いともいわれています。根本的な治療がない疾患であり、定期的な内視鏡検査で胃がんなどがないか確認していくことが重要です。また、ピロリ菌感染と併発している場合もあり、ピロリ菌の除菌治療を何度行っても成功しない人の中には自己免疫性胃炎が一定数含まれていたという報告もあります。
慢性胃炎の診断を正確に行うためには、胃カメラ検査で胃粘膜の状態を確認することが必要となります。粘膜の萎縮の有無を確認し、必要に応じてピロリ菌の検査や粘膜組織を採取(生検)する病理検査を行うことで詳細な診断を行います。ピロリ菌感染による慢性胃炎と自己免疫性胃炎はそれぞれ萎縮の進み方に特徴があり、粘膜の観察のみである程度の診断は可能ですが、治療方針決定や胃がんリスクの把握のためには各種検査を併用して正確な診断を行う必要があります。
ピロリ菌感染が確認された場合には、内服薬による除菌治療を行います。除菌が成功した後も症状がみられる方には、症状に応じて食事・生活指導や各種内服で治療を行います。自己免疫性胃炎では根本的な治療方法はないため、必要に応じてビタミンB12・葉酸・鉄分の補充や対症療法を行います。
以下のような症状・既往がある場合、胃炎の可能性があります。
症状が長引く場合や強い痛みがみられる場合は、早めの受診をおすすめします。
胃炎は、誰にでも起こりうる身近な消化器疾患です。
症状がないからといって安心できるものではなく、放置すると胃がんのリスクを高める恐れもあります。気になる症状がある方や健診で慢性胃炎を指摘された方は、早めに胃カメラ検査による確認をお勧めします。
また、ピロリ菌感染を指摘された場合には内服薬でほとんどの方が除菌できますが、ピロリ菌の除菌が成功すると胃粘膜の炎症が改善するものの残念ながら萎縮した粘膜が正常な状態にもどることはなく、胃がんの多くは萎縮した粘膜から発生するため早期発見のためには定期的な胃カメラ検査が重要です。ピロリ菌感染があった方は除菌成功の有無に関わらず、年1回は胃カメラ検査による経過観察を受けることをお勧めしています。
当院では、専門医による精度の高い胃カメラ検査による胃炎の診断からピロリ菌の除菌治療や経過観察まで一貫して提供できる体制を整えております。
胃の健康は日々の生活の質にも大きく関わってきますので、気になることがありましたらお気軽にご相談ください。

TOP